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映画 「ゴーストライター」 絶対に観るべきです。これぞ、ロマン・ポランスキー監督の美学! [映画]

ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督署)を獲得したユアン・マクレガー主演のサスペンス「ゴーストラーター」について書きます(公開2週目)。

ずばり、映画好きの方なら、絶対に観るべき作品!

この記事を読んだら、すぐに劇場へ行きましょう!!

個人的には、今年観た映画で(現時点で)ベスト作品であります。

映画館でクラッと来ましたもん。御歳80歳、人生いろいろのロマン・ポランスキー監督の映画観と美学がスクリーンから溢れだし、ぐんぐん迫ってくるわけです。

比較は酷でしょうけど、今どきのハリウッド映画って、監督が誰であろうと変わりありませんよね?だって監督の役目はスター俳優のご機嫌を損ねずに、期日までに決められた予算で仕上げ収益を上げる・・・要するにルーチンワークをそつなくこなせば「良い監督」です。監督のこだわり=作家性、など、むしろ百害あって一利なし、とみなされる時代なんですから。

予算と出演者がちがうだけでTVドラマと大差ない映画ばかり・・・それに慣れて、われわれ観客の「感性」も鈍った、というと、風呂敷を広げ過ぎでしょうか?

ロマン・ポランスキー監督ときいて、私がまっさきに思い浮かべるのは、ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウエイ共演の探偵映画「チャイナ・タウン」。ミア・ファロー主演のホラー「ローズマリーの赤ちゃん」です。どちらも古い。ちなみに2000年以降の作品、「戦場のピアニスト」はエイドリアン・ブロディがあまりに痩せすぎ(そこかよ!)で食いつけず、ジョニー・デップ主演「ナインズ・ゲート」は、おどろおどろしさを強調して空回り・・・ポランスキー監督は”やっぱり昔が良い”と(ゴーストライターを見るまでは)思っていたわけです。

少々分析チックになりますが「チャイナ・タウン」「ローズマリーの赤ちゃん」の何がすごいかというとそのテイストなんですね。どちらもストーリーはグズグズ、なんだかよく分からんのです。ハリウッド映画的な”分かりやすさ”と相いれません。ところが映画全体に漂う雰囲気が絶妙で、各シーンに意味がある(ような、ないような)、そこから生まれる不安、緊迫感、リアル感・・・これがスゴイんですね。観客の想像力をかきたてるんです。

どんどん話が脇道にそれますが、ウイリアム・フリードキン監督「エクソシスト」は煽情的なテーマや、悪魔祓いシーンの凄まじさだけでなく、スクリーンからにじみ出る「あの空気」が肝なんですよね。”事が起きる前”から漂う尋常ならざる空気、これが観客に伝染するんです。

ルキノ・ヴィスコンティ、フェデリコ・フェリーニ、ルイス・ブニュエル、ルイ・マル、デヴィッド・リンチ、ヴィム・ヴェンダース、サム・ペキンパー、黒沢明、ヴェルナー・ヘルツォーク・・・彼らには独特の雰囲気と語り口つまり「作家性」があり、それが”唯一の映画”たらしめているんです。ハリウッド職業監督のベタ映画に見慣れたワタクシ、そのことをすっかり忘れていた次第。うーん、恥ずかしいぜ。

が、ついに出ましたね~。やってくれましたね~。ロマン・ポランスキー監督!本作「ゴーストライター」は見事なまでにポランスキー色。元祖アンチ・ハリウッドの気骨を見せていただきました。

そして、主演ユアン・マクレガーさんが素晴らしいのだっ!

とにかく観ていただきたい名作なんです。

ゴーストライター 2010年 フランス・ドイツ・イギリス合作

監督 ロマン・ポランスキー 出演 ユアン・マクレガー、ピアーズ・ブロズナン、オリビア・ウィリアムズ、トム・ウィルキンソンほか

ゴーストライターP.jpg主人公(ユアン・マクレガー)は、有名人に変わって自伝などを代筆する「ゴーストライター」。元英国首相アダム・ラング(ピアーズ・ブロズナン)の自伝依頼を引き受けた主人公は、ラング一家が滞在する、アメリカ東海岸の孤島に向かいます。

自殺した前任者が残した草稿を読み、不足があればラング元首相にインタビュー。たった1か月で、自伝を仕上げるのが彼の仕事です。元首相、その妻ルース、女性秘書アメリア・・・と、一筋縄ではいかない面々と苦労しながらも仕事を進める主人公。ところが、ラング元首相が、在任中に戦争捕虜拷問を指示した疑惑が持ち上がり、マスコミが島に押し掛けるなどの大騒ぎが始まります。

一方、主人公は、自分の前任者の自殺に疑問を持ち始めます。前任者が残した”不自然な”自伝草稿・・・部屋に隠してあった資料・・・泥酔してフェリーから落ちたという「死に方」、前任者は取材を通じて知ってはならない”国家機密”を知り、殺されたのでは?

やがて、主人公にも、じわじわと迫る危険・・・はたして真実は?そして、主人公の運命は?

さて、この映画。

映画全体をおおう、寂寥とした空気、そのリアル感からして素晴らしいんです。主人公たちが過ごす孤島のモノトーンで悲しげな風景、吹きすさぶ風、冷たい雨、映画のイヤ~な展開を見事に象徴していますもんね。

ゴーストライター2.jpg

そして、映画の「語り口」の上手さといったら!

結論を急がず、じわじわと満ちてくる不穏な感じ。分かりそうで分からない「前任者の残した謎」のもどかしさ。誰が敵で、誰が味方なのかも分からない・・・・。

身に迫る危険を感じ、島を脱出しようとする主人公に迫る追手。無人の暗いフェリー乗り場を走る主人公の切なさと孤独が、映像からじわーーっとしみ出してきます。追手は鍛え抜かれたエージェント・・・ではなく、(影だけ見えるのが)ふつうのオッサンぽくって、そのリアルが、ああ、怖い、怖い。

ゴーストライター3.jpg

国家機密を知ったため、当局に追われる「ふつうの人」というコンセプトは、ハリウッドが大好きですよね。数年前「イーグル・アイ」なんて映画ありました。でもハリウッドだと、即物的で、携帯電波から居場所を特定し、完全武装の特殊部隊が乗り込んできたり、対戦ヘリで追いかけてきたりと、派手な娯楽アクションに堕しています。

ところが、「ゴーストライター」には、そんな大仕掛けはありません。フツウさが素直に怖いんです。映画が終わったとき、前の座席にいた女性2人の会話、「鎌を持って追いかけてくるよりも、こっちのほうが怖いよね」・・・うーん、いい発言です。

ゴーストライター5.jpg

主人公を演じるユアン・マクレガーさんは、シリアスなストーリーの中に、彼らしい「乾いたユーモア」を漂わせ好感が持てます。「スターウオーズ」などメジャー作品でも活躍する大スターですが、本作のような「こじんまりした」ヨーロッパ映画でこそ、彼の小粋な良さが光りますね~。

元ジェームス・ボンドのピアーズ・ブロズナンさんが、にやけた元英国首相を、いかにも外面の良い政治家に演じていて、はまり役。悪党っぽさがいい感じであります。さらに、ラング元首相の妻ルース役のオリビア・ウィリアムズさんが、分裂症気味で怪しい感じがまことにヨロシイ。登場人物の描き方も、上手いなあ~と感心しきり。

ゴーストライター6.jpg

脚本よし、映像よし、俳優よし、で、ロマン・ポランスキー監督まだまだ現役!を印象づけた作品です。変に難解ではなく、(ハリウッド映画ほどではないけど)分かりやすいドキドキに、すっかり嬉しくなりました。たぶん、昔のポランスキー監督のような「変化球」は、今の時代は受け入れられないでしょうからね。80歳にして、バランス感覚もアッパレ!であります。

繰り返しますが、是非、劇場公開が終わる前に、観てほしい映画であります。


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コメント 5

もんたんママ

やはり彼の作品はフィルムの湿度が高い事が印象的です。
「テス」「フランティック」他みずみずしい湿度があります。
その印象が官能的な作品であれば、よりエロティックにまたホラーであればより恐怖感を高めている気がします。またどれも主人公が孤独であり単身で(少ない協力者はいても)解決してゆく内容が多いのも、幼少期の体験が大きく影響していますが、その孤独感が今の自分達の生活環境ともシンクロして、リアリズムを醸し出しています。独特の叙情性を持った彼のフィルムが大好きです。
by もんたんママ (2011-10-10 10:15) 

アッシー映画男

To もんたんママ様、コメントありがとうございます。
鋭いご意見です。ポランスキー映画の特徴は、どんなに話が大きくても、内容が荒唐無稽でも、テーマになっているのは「状況に追いつめられる主人公」という、”個人”に帰結するところですよね。
やたらにオカズをまぶすハリウッド系映画と一線を画すのはまさに、この「ぶれない視点」だと思います。
ポランスキー監督が、ハートフルな群像劇など撮ったら、もはや彼の映画ではありませんよね。それと、彼の場合は「あまり金をかけすぎない」映画のほうが、よりテーマが明確になって良い感じがしますね。
あとは、キャストで滑らなければ・・・・。
次回作があるか?はビミョーですが、つい期待してしまう一流の映画作家ですね!
by アッシー映画男 (2011-10-12 06:05) 

アッシー映画男

To 怪しい探麺隊様、niceありがとうございました!
by アッシー映画男 (2012-03-10 11:35) 

アッシー映画男

To inuneko様、niceありがとうございました。
by アッシー映画男 (2012-03-18 22:31) 

ウ・プサラ

おススメに応じまして鑑賞させていただきました。
仰るとおりの作品です。 大変気に入ったです。
やんわりと見せながら、引っ張り込むポランスキー。
水死体が流れ着く場所ではないと指摘した爺さん。
つい先週お亡くなりになったイーライ・ウォラックが
何気なぁ~く登場。イイですね!
ヴィクター・ジョリーが演じても似合いそうな役。
ジョリー氏ではちょっと古すぎましたか?

by ウ・プサラ (2014-07-07 08:37) 

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